―…それは、彼と来る前の年のこと。



私は、ひとりで沖縄に来ていた。



ひとりで来るのは、四年ぶりのこと。



那覇のやちむん通りにある店を訪れると、店主のおばさんが話しかけてきた。



「旅行で来てるの?」



「そうです」



「いいねえ、いつ帰るの?」



「明日なんですよー、もっといたいんですけど」



たわいもない会話だった。



やがて気に入った小皿を見つけ、これください、と言うと、おばさんは私を椅子に座らせ、お茶を出してくれた。



歩き疲れた体に、うれしい心遣いだった。



よく冷えたお茶をいただいていると、おばさんが小皿を新聞紙で包みながら、



「明日はどこに行って帰るの」



と聞いた。



「飛行機が夜なので、時間があるから、ひめゆりの塔に行こうと思うんです」



するとおばさんは、突然皿を包む手を止めて、こちらを見た。



「やめなさい、そんなところ」








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