「え?」



「だから、やめなさいって、そんなところに行くのは。あんた、何も感じない人?」



おばさんの様子が急に変わって驚いた。



「あ、一応、ひめゆりに関する本を読んだりしたことはあるんですけど…」



「そうじゃなくて、何も感じない人なのかって聞いてんの」



おばさんは怒っている感じではなかったけれど、私はどう答えたらいいのか戸惑った。



言葉が出てこなくて、まごまごしていると、おばさんは再び手を動かしながら、



「そんなところより、いい島があるから、そこに行きな。神の島だから、観光地化されていなくて、本当の沖縄がわかるよ」



と言った。



「か、神の島?」



「そう、神の島。このババァにだまされたと思って、一度行ってごらん」



おばさんはババァというほどの年でもないけれど、まあ、そこは置いといて。



それから10分くらい、熱心に島の美しい自然について聞かせてくれた。



そのときにはもう、最初に声をかけてくれたときのおばさんに戻っていた。



普段なら、地元の人のおすすめスポットを教えてもらえてラッキー、と喜ぶところだ。



でも、先ほどのただならぬ反応を見た直後だったので、私はやけに真剣な面持ちで話を聞いた。



しばらく経って話も落ち着いたところで、私は会計を済ませて、お茶と島の情報のお礼を言って、店を出た。






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