あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
でも君の声がすると耳をすましてしまう。
『幸希先輩…早く目を覚ましてください……』
その言葉はとても私の胸を苦しめる。
優星に会いたい。
声だけじゃダメなの。
貴方の顔も見たい。
元気な笑った顔。
でも目を覚ますのも怖いの。
まだ…目を覚まさなくてもいいでしょ?
私は深い深い眠りに誘われ落ちていく。
そこは深くて冷たい。
だけど誰も私を傷つける人なんていない静かな場所。
こんな場所を心から望んでいたのにどうしてかな?
『幸希先輩!』
優星…君の事が頭から離れない。
ずっとここにいたいと思うのに。
目を閉じると優星が必死に私を呼ぶ声が聞こえた様な気がした。
目を開けると目の前には優星の後ろ姿。
その後ろ姿はとても寂しそうで今にもどこかに消えてしまいそうな…そんな気がした。
『…優星』
ぽつりと零れた。
優星を一目見れただけで私はこんなにも…。
『幸希先輩…っ』
こんなにも嬉しくて堪らないんだね。
君が私を探してくれている。
こんなに必死で。
もしかしたらこれは夢かもしれない。
けれど…。
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