全てを恨んで死んだ悪役令嬢は、巻き戻ったようなので今度は助けてくれた執事を幸せにするために生きることにします
***

 数日後、アメル公爵家までやってきたミリウスの二人の従者によって、あの事件の顛末を聞かされた。

 ミリウスは城で数日間の謹慎処分になったらしい。実際に神具を持ち出してはいるのでそれは仕方ないことだ。

 けれど、従者たちの言うことには私が証言したことでミリウスが単独で神具を盗んだかどうかに疑問が残り、処罰は随分軽くなったのだという。

「本当にありがとうございました。エヴェリーナ様」

「エヴェリーナ様がいなければ、謹慎程度では済まなかったはずです」

「いいえ、私は大したことを言ってないわ。二人があのシスターを連れてこなかったら、聞かなかったことにされていたと思うし」

 私が証言できたのは、糾弾事件の十日前にミリウスとカミリアの世話係を見かけたということくらいだ。決定的な証拠になることは何も言えなかった。

「いいえ、そんなことはありません! エヴェリーナ様があの場で話してくださらなければ、きっとパーティーの参加者たちはミリウス様が私欲のために神具を盗んだと信じたことでしょう」

「そうですよ! 残念ながらその後の調査でもカミリア様がミリウス様に兄が病気だと偽って神具を盗むよう誘導させたのかをはっきりさせることはできませんでしたが、あの場にいた者はみんなカミリアを怪しんだはずです。それだけで十分です」

 従者たちは熱心に言う。私はその勢いに押されながら、「それはよかったわ」と言っておいた。

 この前すぐさま問題のシスターを連れてきたときも思ったけれど、この二人は従者としてだけでなく本心からミリウスを慕っているのだろう。

 その後、従者たちは私に何度も頭を下げながら去って行った。

 私はちょっと誇らしい気分になりながら、二人の後ろ姿を見送った。
< 79 / 197 >

この作品をシェア

pagetop