冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
「前田、待たせた。」
車で待っていた前田に声をかける。

香世を先に乗せ隣に乗り込む。

「ボスお疲れ様でした。
大変でしたが極秘任務終了ですね。
香世ちゃんも俺の早とちりですいません。
要ら無い心配させたね。」

馴れ馴れしく話す前田に気持ちが逆立つ。

「いえ、早く安否が分かって安心しました。
ありがとうございました。
真壁さんの傷の具合も心配ですが…。」

「真壁さんは結構怪我しやすい人なんですよ。
去年も骨折してるし、慣れてるんじゃないですか?」
前田が笑いながら敢えて軽く話す。

「そうなんですね…
正臣様もお怪我はよくされるのですか?」
心配そうにこちらを見てくる。

「いや、俺は普段指揮を取る事が多いから
今回のように現場に出る事はそう無い。」
 
香世は明らかにホッとしたような顔をする。

そこまで自分の心配をしてくれているのかと嬉しく思い、無意識に笑顔になる。

「…手の腫れが心配です。」
香世は俺の手を覗き込む。

「ボッコボッコにしたんですか?」
楽しそうに前田が言うから、
俺は空気を読めと視線を投げ、
わざと咳払いをする。

他人を簡単に殴る男だと、香世に怖がられたら辛い。

「接近戦になったから仕方ない…。」
香世の顔色を伺ってしまう。

車の中は終始、前田のおかげか明るく話す香世を見る事が出来てホッとする。
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