冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

これから(正臣side)

香世と2人の生活はこうして始まり、
穏やかな日常になっていった。

龍一と真子も小学校に入学し同じ組になったと喜んでいる。

香世の父の会社も父の意志とは裏腹に、
新社長の松下宏伸を筆頭に役員も一部代わり、新たな体制で再出発した。

会長職に香世の父をと再度打診したが
受け入れられず、話し合いは結局決裂した。

しかし俺としては香世の実家にどうにかして安定した資金を送り生計を立てて欲しいと思う。
その事もあってある事を思い付き松下と共に話を勧めた。

それは、香世を会社役員の1人にすると言う事だ。

そうすれば給金を得る事ができる。
それに、昔からの株主には前社長の縁があり、少なからず血縁者を入れた方が円滑に事が進むと松下からの要望もあった。

しかしまだ、この事を本人には話せないでいる。

香世は普段、奥ゆかしく従順で一歩後ろを歩くような人だ。

それは父からの教えが強いのだと思うし
未だ男尊女卑が根強いこの社会では仕方が無いと思うのだが…。

彼女の持っている時折り見せる凛とした強さは何者にも変え難く。
新しい時代に担っていけると密かに俺は思っている。

そして今夜会社の役員となるべく書類を持って松下が家を訪れる事になっている。

香世には来客があるから夕食の準備をお願いしたのみだ。

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