冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
その日の午後は、
前田が学校帰りの龍一と真子を連れて来てくれて病室は一気に賑やかになった。

龍一と真子の宿題を見ながら過ごす。

真子が急に思い出したかのように話し出す。

「そう言えば、この前二階堂様がね、
夕方仕事帰りに来てくれて、施設のみんなで食べなさいって柏餅をくれたの。
すっごく美味しかったから、姉様からお礼を伝えてね。」

「そうだったのね…
伝えておくね。私もその日の手土産は柏餅だったよ。正臣様はいつもそうやって皆に良くしてくれるよね。」

聞かされてなかったから驚いたけれど、
正臣はいつもきっと何気無くそうやって、
当たり前のように人を喜ばせてしまうんだろう。

彼にとってそれは慈善活動の枠を飛び越えて、家族のような振る舞いなんだろうな
と思う。

「僕も柏餅食べたよ!
二階堂様からのお土産だって聞いた。」

「そうなのね。正臣様にお礼を言わなくちゃね。」
凄い人だと改めて実感する。

「ねえ。みんなで正臣様にお礼をしない?
例えば折り紙で何が作るとか…お菓子を作って渡すとか…何が良いと思う?」

私の提案で子供達が真剣になって考え始める。

「二階堂様はきっと甘いものがお好きだから何かお菓子を作るのはどう?」
真子ちゃんがそう言うと、

「内緒で練習して歌をプレゼントするのはどう?」
龍一が目をキラキラさせて言う。

「せっかくなら日頃のお礼も兼ねて全部やりましょうか。いつが良いかしら?」
私も楽しくなってきていろいろ模索する。
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