冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

「二階堂様の誕生日はいつ?」
真子ちゃんが私に聞いて来る。

「誕生日?そう言えば知らないわ…。」

みんな一斉に前田さんに振り返って聞いてみる。
突然みんなに見られて、
前田さんがえっ⁉︎っと驚く。

「二階堂様の誕生日はいつですか?」
龍一がすかさず聞く。

「ボスの、誕生日ですか?
…確か夏辺りだった様な…うーん。」
前田が腕を組んで考え始める。

「えー⁉︎知らないの?
この中で一番長く二階堂様といるんだから
思い出して下さいよー。」

真子ちゃんに急かされて、
前田は真剣な顔で考えるが、

「確か…七夕祭りに近かったような…」

前田が絞り出した答えは曖昧なもので…
部屋にいる誰もが前田をじとっとした目で見つめる。

「お言葉ですが!
人の誕生日なんて覚えられませんよ。
ましてや男同士で知ってたら逆に気持ち悪い
じゃないですか!」
前田がそう言って反論する。

「ここは香世ちゃんが聞き出すべきだ。
1番長く一緒に居るんだから。」
前田が良い考えだと言うように、ニコッと笑う。

「えっ…。私そう言うの苦手です。」
私が聞き出すの⁉︎

責任重大だ…
絶対不自然過ぎて何かあるって見破られそう…

「二階堂様は施設の子供達みんなに毎年誕生日プレゼント渡してるよ。
そうだ。みんなにも相談してみよう。」

真子ちゃんが飛び上がってそう言い出すから、
思っていた以上に規模が大きくなりそうだと
心配になる。

「あまり人を集めるのは正臣様が驚かれてしまうし、バレてしまうから3人でこっそり計画しましょ。
私も頑張って誕生日聞いてみるから。」

3人と前田さんも巻き込んで、
あーでも無いこーでも無いと相談しながら
日が暮れていく。

「香世姉様、絶対よ。
明日には聞きに行くからね。
くれぐれもバレないようにね。」

夕方になり帰り際、
再度、真子ちゃんに念を押されてしまう。

「分かったわ。今日中に聞いてみるから…。」

「香世ちゃん、良いこと教えてあげる。
もし聞き出せなかったら、
軍服のポケットに身分証明書がある筈だからそこに書かれている筈だよ。
健闘を祈ります。」

前田にまでそう言われ、
変な緊張感だけを残して3人は帰って行った。
< 253 / 279 >

この作品をシェア

pagetop