冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
家に着くとタマキが心配な顔で待っていて
車の所まで傘を持って来てくれた。

香世に軍服を羽織らせ、先に家に入る様に促す。

雨はまた勢いを増して振り始める。

既にびしょ濡れの正臣は傘もささずに玄関に飛び込む。

「香世が先に風呂へ入れ。」

「駄目です、正臣様の方がびしょ濡れですから先に入って下さい。」
香世は一番風呂をもらう訳にはいかないと
首を横に振る。

玄関先でそんな押し問答をしながら、
正臣は濡れたシャツを脱ぎ手拭いで拭きながら、香世の手を取りずかずかと廊下を進む。

風呂場に連れて来られる。

正臣は有無を言わさず、
香世が着ていたブラウスのボタンに手をかけて取り外しにかかるから、びっくりして正臣の手を思わず握る。

「えっ?えっ⁉︎正臣様?」
半裸の正臣を見るのも恥ずかしくて、
俯き必死で正臣の手を止める。

「先に入るか一緒に入るかの2択だ。
どうする?」
正臣の問いに慌てて香世は、

「さ、先に入ります!」
と浴室に飛び込む。

ハハッと正臣は笑って
「ちゃんと温まれよ。」
と言って脱衣場を出て行く。

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