冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す
今日、香世はこの家を出る。

お嫁に行くならばまだしも晴れの門出になった筈なのに……。

香世は花街に売られるのだ。

他でも無い父の言いつけで逆らう事など到底出来ない。

せめて政略結婚でもさせてくれれば良かったのにと、香世は投げやりに思う。

初め香世は花街がどんな場所なのかは良くは知らなかった。

後から読んだ文学小説に春を売る場所だと書いてあった…。

今年18才になったばかり、まだ恋も知らない。
男の人の手を握った事も無い香世にとっては衝撃的な事実だった。

父が初めて香世にこの話をした時、
舞妓や芸妓のように舞踊やお琴の嗜みはあるから、確かに今までの経験を活かせる場所だわ。
と他人事のように思った事を恥じる。
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