悪役令嬢は友人の恋の行方が気になる
ホールの中央で踊る王太子と友人を見て、マリアは沈んだ気持ちになっていた。

手を差し出されたのは自分だったはずだ。驚きはあったが王太子に声をかけられたのは嬉しいと思った。手を取るべきか迷っている間に、隣りにいたステファニーが王太子の手を取った。
先程自分が
『見ていられればいい』
と言ったのを覚えていて気を使ってくれたのか。
それとも、ステファニーは王太子の事が気になっていたのだろうか。そんな素振りは全く見せていなかったのに。

反対側の隣りにいた父は、ステファニーが王太子の手を取ったときに安堵の息を吐いていた。
ステファニーなら王太子妃となる家格も申し分ない。
だからこれで良かったのだ。
そう思う事で自分の気持ちを閉じ込めた。
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