悪役令嬢は友人の恋の行方が気になる
王太子が部屋を出て、ステファニーの部屋にいるのはステファニーと近衛騎士の2人になった。

「あなたはいいの?ロベール。マリアを妻にできないのは惜しくない?」
「私の主が幸せである事が、私の幸せです。」
「優等生の答えね。」
ステファニーはため息をついた。ずっとこの部屋で護衛として一緒にいたロベールは王太子の近衛騎士だ。
「本音を言えば…」
ロベールは先程よりも柔らかい表情で続ける。
「マリア嬢よりも気になる方がいるのですよ。」
「え?」

ロベールが気になる令嬢とはどの家のどなただろうか。ステファニーの心がチクリと痛む。

「私は男性に従順な方よりも、自由で意思の強い芯の通った方が好みなのです。」
相変わらずの柔らかな表情でロベールが答える。
「それは…変わった好みですわね。」
ステファニーは当惑して言った。男性は皆マリアのような令嬢を好むのだと思っていたが、ロベールは違うらしい。

「それよりも」
ロベールは続ける。
「この計画が実行されたあと、あなたはどうなさるのか?悪役令嬢の行く末はあまり良いとは言えないのでは?」
「大丈夫よ。本が読めて書く事さえできれば贅沢な生活はいらないわ。」
「先は考えていないのですね。」
「マリアの幸せが優先だもの。自分の事は後回しよ。」
「殿下に悪いようにしないと約束させましょう。私からお話ししておきますよ。」
「ありがとう。でも無理はしなくていいわ。」
それはステファニーの偽らざる気持ちだった。
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