悪役令嬢は友人の恋の行方が気になる
「あなたの背中が震えて見えたので、温めて差し上げようと思ったのですが。」
ロベールの声が耳元で聞こえる。そんな近くで男性の声が聞こえた事など人生で初めてでどうしていいのかわからない。
「あ、あの…。」
動けば動くほど抱きしめる力が強くなる。

「ステファニー嬢、私は一介の騎士で受け取る領地も爵位もあなたが満足できるものではないかもしれない。それでもよければ、私のところへお嫁に来ませんか?」
マリアの婚約者に選ばれた時は、伯爵位を引き継ぐ事も出来たが、それはなくなった。ケント公爵家で保有する伯爵位をもらい受けることにすれば良い。父にも了承は得ている。伯爵位には王国の南方の小さな領地も付いている。騎士でいる間は公爵家に任せて、騎士を辞めることになったら、移り住むのも良いかもしれない。王太子が許せば、の話だが。

「そんなおいしい話、私が聞いてもいいの?」
「おいしい話?食べ物の話ではありませんよ?」
ステファニーの言葉を面白がって、ロベールが笑いながら訂正する。
「おいしいって言うのは、都合が良すぎるって意味よ。私には都合が良すぎるわ。ロベールには何かメリットはある?私には悪い噂が付き纏うのよ?良いことなんかないでしょう?」
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