シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
第三章


第三章

 あれから一週間。そわそわしながらこの日を待った。

 普段カジュアルな服装で出勤することが多いのだが、今日はせめてトップスだけでも華やかに見えるように明るい水色のブラウスを選んだ。袖のカットワークがかわいらしくかといって派手すぎないのでちょうどいいと思ったのだ。


 私がクリニックを訪ねたとき、すでに受付の人が仕事を終えて出てきていた。

「あ、先生の。どうぞ、中に」

 先日受付で会った人だ。どうやら朝陽くんが前もって私の訪問を伝えておいてくれたようだ。

〝先生の〟って先生のなんだって説明したんだろう。

 まぁ、普通には患者、よくても幼馴染だろう。だってそれ以外にふたりの関係を言い表す言葉はないのだから。

 待合室でまっていると、朝陽君が出てきた。今日も紺色のスクラブを着た彼はかっこいい。

「お待たせ、行こうか」

「うん」

 初日に感じたような恐怖心は私の中には一切なかった。この一週間、この日を楽しみにしていた。不謹慎だが治療よりも彼に会うのが待ち遠しかったのだ。

 一週間前、帰宅した朝陽くんから連絡がその日のうちにきた。それから何度かやり取りをした。その内容は日々のやりとりや、昔の話だったり。ちょっとしたことだ。そのやりとりをするだけでウキウキして日々がいつもと違って見えた。

 それくらいこの一週間の私はうかれていた。そして今日も治療の後、彼が自宅まで送り届けてくれる予定になっている。

 診察室の椅子がゆっくり倒れていく。この間は痛みと恐怖で泣きそうなっていたが、今日は痛みもなく怖さもない。むしろカルテを確認したり器具を並べている朝陽くんを目で追う余裕があった。

「ん、なにか心配なことでもあるのか?」

「ううん、大丈夫。信頼しているから」

「そうか、じゃあ稲美さん口を大きくあけてください」

 急に歯科医師らしく話始めた彼に思わず頬をゆるませながら、私は言われた通りに口をあけてじっとしていた。
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