シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
 治療が始まるまでは泣きべそをかいていたのにと、少し笑ってしまった。こういうところは子供らしくてかわいらしく思う。

「そうだね、強かったよ。えらいえらい」

 私が頭をなでると得意げに微笑む。

 はぁ、かわいいなぁ。よかった無事に治療が終わって。

 唇も切っているから、すぐに痛みがなくなるわけではないけれど、歯については神経が傷ついている様子もないので経過は観察しないといけないがまずは一安心だと言っていた。

 受け持っている子供の無事を知ってほっとする。きっとあのまま帰ってしまっていたら、月曜の朝に元気な顔を見るまで心配してしまう。

 憂いなく穏やかな週末を迎えられそうだ。

「ねぇ、先生」

「ん?」

 一安心していたところに、空くんが私の腕をひっぱった。

「あのね、最初に約束したこと覚えてる?」

「ん? あぁ、ひとつお願い叶えるっていうあれ? 忘れてないよ」

 空くんはうれしそうに飛び跳ねた。

「やったー! じゃあ、先生僕と結婚しよ」

「えっ、なに?」

 聞き間違いかと思い、もう一度尋ねた。

「だから、先生はまだ結婚してないでしょ? だから僕と結婚しよ」

「えー、私と結婚するの?」

 あまりにも可愛いプロポーズに驚くと同時に、可愛くて悶え死にそうだ。

「うん。ママはパパと結婚してるからダメって言われた。だからママの次に好きな先生と僕は結婚するんだ、ね、いいでしょ?」

 うれしそうに話す空くんの笑みに思わずつられて私も笑った。

「うん、そうだな。空くんが大人になって先生のことをまだ好きでいてくれたら、結婚しようか」

「本当に? 絶対?」
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