シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
 空くんはしっかりと朝陽くんの話を聞いてうなずいた。

「じゃあ、はじめます」

 マスクをつけ直した彼が、私の方を見てうなずいた。

 ゆっくりとシートを倒すと、空くんは泣き出すことも暴れることもなく口を大きく開く。

 その後の治療の最中も、時々私の手をぎゅっと握ることがあったがそれでも彼は我慢強く治療に耐えた。

 朝陽くんはそんな中、丁寧にかつ迅速に治療を施していく。状況が状況なのでそう長い時間をかけるわけにはいかない。しかし常に空くんの様子を窺うのは忘れない。

 本当に上手だな。私はこうやって傍にいるしかできないけれど、できる限り空くんの恐怖を和らげるように彼と目を合わせ「大丈夫だ」「がんばれ」「偉いね」と声をかけ続けた。


 治療を開始して五十分後。

 空くんは診察台を下りて、お母さんのところに駆けていく。

「こら、麻酔しているから走らない。また転ぶぞ」

 朝陽くんの言葉に、空くんはピタッと足を止めて歩く。気がついたお母さんが手を開いて彼を抱きしめた。

 ほっとした表情でお母さんにぎゅっとしがみついている様子を見て、子供にとって母親の存在は偉大だと思い知る。

 私では決して母親の代わりにはならないのだ。そう思うと空くんは本当にがんばったのだとわかる。

「ありがとうございました」

「いえ、彼がよくがんばってくれたので、早く終わりました」

 朝陽くんはレントゲンの写真の写真を見せながら、今日の治療内容を母親に再度説明している。

 私はその間に、空くんと話をした。

「空くん、とってもがんばったね。本当にすごいね」

「俺、全然平気だった。強いから!」
< 21 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop