庇護欲強めの彼に守られ、愛されました
「なにこれ。怖すぎ! ヤバいじゃん」

「今日ここに現れるかもって不安で、実は気が気じゃないの。だけど……現れないかもしれないし、あと四時間働いたら終わりだからがんばる」

「無理しないでダメなら早退すればいいよ」

 私のSNSでの宣伝効果でイベントにはフォロワーの人たちが来てくれるだろうから、存分に愛想を振り舞くようにと、会場に着くなり上司から言われた。
 だけど体調不良で倒れでもしたら、逆に会社に迷惑をかけてしまう。そうなる前にギブアップしてもいいのだ。光里の言葉に救われて、心が少し楽になった。

 休憩を終えて会場内に戻り、不審者がいないかとキョロキョロ辺りを見回した。
 時間が経つにつれて来場者が増えている。それはありがたいことなのだけれど、これ以上混雑すれば、怪しい人間が紛れ込んでもわからなくなりそうだ。

 来たばかりのカップルに声をかけ、パンフレットを渡しつつ新商品のビールをさりげなく勧める。
 女性から「SNS、いつも楽しく見てます」と言われて、記念に三人で写真を撮った。
 私の投稿がきっかけで来てくれたのがうれしくて、恐縮しながら「ありがとうございました」とていねいにおじぎをしてカップルを見送る。

 ホッとひと息ついたそのとき、私の背後に人がいる気配がした。

「遅くなってごめん」

 左の耳元で突然囁かれて、私の心臓は痛いくらいにドキンと大きく跳ねた。
 振り向くとそこには、紺色のパーカーとジーンズ姿で、黒のキャップをかぶった男性が立っていた。

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