推し一筋なので彼氏はいりません
次の日。
私は約束通り、DVDを持って学校に向かった。
「おはようございます、菅野さん。」
そして予想通り教室の前で待っていた佐山先輩の前で立ち止まる。
「おはようございます。
これ、昨日言ってたやつです。」
左手に持っていた紙袋を差し出す。
「ありがとうございます。」
「いえいえ。こちらこそこんなにもアニメに興味を持ってくれて嬉しいです。」
「俺もバスケしてるし、それに菅野さんの好きなものなので。」
普通に話してる分には楽しい(?)から、忘れそうになるけど、そういえば私この人に告白されたんだった。
「佐山先輩の好きなものは何ですか?」
「えっ、俺に興味持ってくれたんですか?」
「いや別にそういう訳では……。」
「嬉しいです。もっと興味持ってください。」
「あ、いや、いいです。」
めんどくさくなったので話を切り上げて席に向かう。
話の流れで何となく聞いただけだったんだけどな〜。
「菅野さんは遥斗くん以外に好きな何かはあるんですか?」
相変わらず私の無視を無視して話を続けてくる。
「特には。」
「好きな食べ物は?」
「甘いものです。」
「好きな色は?」
「青。」
「遥斗くんのイメージカラーですもんね。
じゃあ、好きな季節は?」
「秋。」
「ん〜、好きなアーティストは?」
「特にいません。というかさっきから質問多くないですか?」
「すみません。つい、気になってしまって。」
「そんなに気になることでした?」
「はい。菅野さんのことならなんでも気になります。」
「あぁ…、そうですか。」
「菅野さんは気になりません?俺のこと。」
「全く。」
「そっかぁ。俺もまだまだですね。
そろそろ授業始まるんで戻りますね。また!」
あの日の結構オタクな私にも、普段のこういう塩対応にも、佐山先輩は全く動じない。
先輩は、このまま私が何も言わなかったら、卒業するまで毎朝来るつもりなんだろうか。