推し一筋なので彼氏はいりません
そして1週間後。
「菅野さん、おはようございます。
これ、お返ししますね。」
「えっ、もう全部観たんですか?」
「はい。面白くてあっという間でした。」
私的には返されるのは1、2ヶ月後くらいの気持ちでいた。
生徒会に部活に勉強に忙しいはずなのに、どこにそんなにアニメを観る時間があったのだろうか。
「……ちゃんと寝てます?」
「はい、8時間は。」
え、だとしたらほんとにどこにそんな時間あったの?
部活終わって帰ったら7時とか8時だよね?
帰ってからご飯食べたりとかもするし、課題もするよね?
この人だけ1日の時間が24時間じゃなく多めに与えられているとか……?
それか途中で飽きて観たことにしたとか?
「あの、無理に私の趣味に付き合わなくても大丈夫ですから。」
「そんなこと思ってません。本当に面白かったですよ?
特に強豪校との試合は、観てるだけなのに俺も力が入っちゃって、負けた時は一緒に悔しくなりました。」
それ3期の半ばくらいだ。
ほんとに観てくれたんだ。
「佐山先輩も推しキャラとかできました?」
「みんなそれぞれ違ってそれぞれの良さがあるのでなんとも……。
あと普通にストーリーを楽しんでしまっていました。」
「いやそれで全然いいんです!楽しみ方は人それぞれなので!」
「あと俺の推し?というのかわかりませんが、1番興味があるのは菅野さんなので。」
「……アニメの話してたのに。」
「そうでしたね。
そういえば、アニメでバスケ部のマネージャーがちやほやされてましたが、菅野さんの方が魅力的だと思いました。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「菅野さんは部活は?」
「何も。バイトと推し活が忙しいので。」
「なるほど。」
「佐山先輩はバスケ部ですよね。上手いって聞きました。」
「特別上手くもないですよ。」
「でも先輩の最後の試合観に行くって言ってる人何人もいましたよ。」
「最後って部内の先輩後輩で分かれて試合するやつかな。あれは元々観に来る人多いんですよ。」
「そうなんだ。」
「菅野さんも来ます?」
「え、なんでですか。」
「なんとなく?
まあ来れそうだったらでいいですよ。」
「はい。」
そろそろ戻ります、と言って特進科の棟の方へと帰っていく。
あのいつもにこにこしてる先輩がバスケしてるとこなんて想像できないなぁ。