推し一筋なので彼氏はいりません
《菅野愛衣 side》
「かーんのさんっ。
一緒に帰りません?」
「佐山先輩。
え、授業は?特進科ってもう1時間ありますよね?」
「なんか先生の都合で今日はないらしくて。
だから菅野さんと一緒に帰りたいなと思って、来ちゃった。」
「来ちゃった、って……。」
「ダメ?一緒に帰れない?何か予定あります?」
帰ってからは予定あるけど、一緒に帰れないわけではない。
「ないけど……。」
「じゃあ決まり。
校門で待っててくださいね!」
そう言うと私の返事を聞く前に、走って行ってしまう。
普通科と特進科では棟が違って下駄箱の位置も違うから、校門で待ち合わせなのは納得できるけど。
私はこの一週間でこの佐山暁良という人物がどれだけ人気者かということを、身をもって知っている。
だからこそ校門なんて人目の多いとこで待ち合わせなんて、危険すぎない?
そうは言っても先に帰ってしまうなんてことできなくて、言われた通りに校門付近で待っていた。
「すみません、おまたせしました。」
数分もしないうちに佐山先輩が小走りで駆け寄って来る。
「いえ。」
「帰りましょうか。
菅野さんどっち方面ですか?」
「私はこっちです。」
「わかりました。」
佐山先輩はニコニコしながら、私が指をさした方に歩みを進めるけど、佐山先輩って帰る方向一緒なんだろうか?
「佐山先輩もこっち方面ですか?」
「んー、まあそんなとこ?」
曖昧な言い方するなぁ。
家の場所あまり知られたくないとかかな?
まあ個人情報だし、佐山先輩にそこまで興味ないし、別にいいんだけど。
「そうなんですね。」
「ねぇねぇ、菅野さんの好きな人ってどんな人なんですか?」
「どんな人……。
まずとにかく顔面が良いですね。あと背も高い。
そしてそれだけ見た目がいいのに、少し自信なさげでツンデレなのがまた最高です。」
「なるほど。
最初2つは割と俺も当てはまるけど、あと2つは違うかな。
残念。俺じゃ菅野さんのタイプになれないですね。」
三次元の人の顔を気にしたことないけど、みんながあれだけ騒ぐんだからおそらくイケメンの部類なのだろう。確かに背も180センチほどあるように思える。
自分の見た目に自信あるのは悪いことじゃないけど、遥斗くんとは並べないに決まってる!
「……怒ってます?」
「いえ、別に。
ただ、随分と自分の見た目に自信がおありなんだなと思って。」
「まあ…。逆にあれだけ持て囃されてて自信ないっていう方が感じ悪くないですか?」
「確かに…、それはそうだと思います。」