ムーンサルトに 恋をして
頬に温かい指先の感触を感じた。
思わず目を開けると、そこにいたのはジル。
優しく涙を拭ってくれたようだ。
音楽を止め、イヤホンを外すと、ジルは隣に座った。
そして、耳元にそっと呟いた。
「Moonsault ♪」
「ムーンサルト?」
何のことだろう?と小首を傾げると、ウインクされてしまった。
脱いだ上着を私に手渡し、目の前の芝生に私を導く。
準備運動なのか、ジルは軽くストレッチを始め、バク転やバク宙などを軽やかにこなし始めた。
そして、少し離れた場所から私に手を上げ合図を送る。
「ナナ~ッ!Are you ready~?!!」
彼は私の元へと駆け出し、その助走の勢いで側転、バク転数回、その後に後方に宙返り二回一回捻りして着地した。
あまりの速さに一瞬の出来事で……。
最初の方のバク転ですら、足先までピンッと張られていて綺麗な上、何て表現したらいいのだろう?
しなやかなバネのような、弾力のあるゴムのような。
ピョンピョンではなく、ビュンビュンと表現した方が近い気がする。
しなやかなのに強さも兼ね備えていて。
しかも、膝が曲がることなく、ピンッと張られた状態が最後までキープ出来ていることが何より美しくて。
瞬きも忘れ、口がポカンと開いたままで、彼を見入ってしまっている。
「ナナ?……ナナ??」
「あ、………Excellent !!」
これ以上の言葉が思い浮かばない。
手がジンジンと痛むほどに拍手すると、彼は照れながら『アリガト』と口にした。