宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと
「条件はね、一緒に来た男の子に『好き』って告白されること。そして、あなたからも気持ちをきちんと伝えること」

「えっ? 難しい、ムリ!」

「あとね、焦らなくても大丈夫。戻れたら、元の世界にいた場所、時間に戻れるから。あなたたちから見れば、あっちの世界は時間が止まっているって考えれば分かりやすいかもね。応援してる! 頑張ってね!」

 そう言ってお兄さんは微笑んだ。

 頑張ってって言われても……。

 わたしは宮野くんをチラッと見た。目が合う。

「なんて言ってた?」
「あのね、今私たちがいるところって、夢の世界なんだって」
「はっ? 夢の世界?」
「うん。ちなみに元いた世界は、場所も時間も止まってるみたい」
「じゃあ、家族が心配して探してるだとか、そういうのはないってことだな」
「そうだね、そしてね……」

 元の世界に戻る条件、言いづらい。

 だって、告白されるなんてありえないし、私から気持ちを伝える勇気なんてないし。

「そして、何?」
「……それだけかな」
「元の世界に戻る方法は?」
「お兄さんも分からないって」

 なんとなく言えなかった。
 宮野くんにウソついちゃった。 

「……そうなんだ」

 宮野くんはしばらく黙った。

「じゃあ、他の人にも聞いてみるか?」
「……うん、そうだね」

 私が言わないせいで、手間が余計にかかる。
 今からでも伝えた方がいいかな?
 そう考えている時だった。

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