宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと

6*葵ちゃんから連絡

「えっ? 葵?」

 混みあっている方を見ていた宮野くんが呟いた。

「どうしたの?」
「いや、気のせいかもしれないんだけど、今、葵たちらしき人いた」
「葵ちゃんが?」

 宮野くんから『葵』って名前を聞いて、心がズキンとした。
 私は『小松』って呼ばれているのに。
 なんか私よりも親しげで。ここに来る前も宮野くん、葵ちゃんとふたりきりであそこにいたし。いつも学校でも仲良さそうだし。

 宮野くんと葵ちゃん、実は両想いだったりして。
 ふたりのことを考えるだけで心がどんどん痛くなっていく。

「葵ちゃん、いないよ。気のせいだよ」
「そっかなぁ。葵な気がしたけど」
「小松、どうした? 顔色悪いぞ。大丈夫?」

 だって、宮野くんが葵ちゃんの名前、何回も言うんだもん。

「うん、大丈夫。昨日あんまり眠れなかったからかな」

 下手な理由だな……。

 もしここに葵ちゃんがいたら、宮野くんと葵ちゃん、再会しちゃう。葵ちゃんが元の世界に戻る条件をもしも知っていたら? きっと葵ちゃんが告白して、宮野くんも葵ちゃんに告白して……。

 今ここでふたり、会ってほしくないな。
 宮野くんとふたりきりでいたい。

「わたし、家戻ろうかな」
「どうした?」
「ちょっと、具合悪くて。足も痛いし」
「そっか、家に戻って休むか」
「うん、ごめんね」

 別に具合悪いわけではなくて、足も痛くないけれど。本当の理由なんて、言えない。

 元来た道を歩こうとした時だった。

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