宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと
「小松さん、花好き?」

 落ち込んでいたら、新井くんに質問された。

「花、大好きだよ!」
「これ、見て?」

 新井くんが花の種が入った小さな袋をテーブルに並べた。8種類ある。

「わっ! 花も育てられるの?」
「うん。しかも天気の良い日に種まきして、水をあげると次の日にはもう成長して花が咲くんだ。もう畑、隣に出来てるから、そこで育てよう。好きな花、選んだら畑に行こうか?」

「畑? この辺、砂浜だよ!」
「大丈夫。とりあえず選んで?」
「うん、分かった」

 どうしよう。
 花の種類が沢山ある。

「アリッサムがいい!」

 私はアリッサムの小さな種を出すと、なくさないように大切に持って、新井くんと一緒に外に出た。

「わっ! 別世界!」

 もうここに来てから驚きの連続。
 
 だって、目の前には海がなくて、砂浜もない。いつの間にか緑の世界になっていて。

 今見えるのは、木や、草原、川もある。

「場所も変えてみた」
「すごいね、新井くん。こんなことも出来るんだ!」
「あのね、お願いがあるんだけど」

 突然新井くんの声が小さくなる。

「何?」

「まだ宮野には告白しないでほしい」

「えっ?」

「いや、小松さんと、ここでまだ一緒に過ごしていたくて……」

「告白なんて、出来ないよ。それに告白しても、相手からも好きって言われないと、元の世界に帰れないんでしょ? どっちにしても帰れない」

「帰りたくなったら、いつでも僕に好きって言って?」

「でも……わたし、好きな人にしか好きって言えない……」

「だよね、ごめん。今言ったこと、気にしないで! とりあえず、畑見てみて?」

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