宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと

11*花が咲いた

 次の日、朝起きてすぐに新井くんの声がした。

「小松さん、花、咲いてるよ!」

 私は葵ちゃんと一緒にベットで寝ていたから、起こさないようにそっと布団から出る。

 暑くて開けていた窓から下を見下ろした。

「本当に? 見たい!」
 
 小さめな声で返事をした。
 そして階段を駆け下りて、外に出た。

 白とピンクと薄紫のアリッサムが想像以上に綺麗に咲いていた。

「早く小松さんに見せたくて!」

 キラキラしながら新井くんが言った。

「ちょうど目を覚ましたところだったよ!」

「よかった。でも、まだ小松さん、パジャマ姿だし。時間早すぎて、ごめんね」

「ううん。朝一番に綺麗に咲いたアリッサムが見られて、今日は何かいいことありそう!」

「ついでに食べる分だけ野菜持っていこうか! 今日はご飯、みんなで食べようね」

「……うん」

「僕、トマトときゅうり食べたいな」

 新井くんが準備してくれたふたつのザルに野菜を入れて、それぞれひとつずつ持ち、宮野くんの家の玄関に入った。

「小松さん、ありがとう」

「こっちこそありがとう。私、家で着替えてくるね」

 私が持っていたザルを新井くんに渡した。

 ちょうどリビングを歩いている宮野くんが玄関から見えた。目が一瞬合ったけれど、わたしの方からそらしちゃった。

 自分からそらしたくせに悲しくなる。
 せっかく仲良くなれた気がしたのにな……。

 こういう時、明るい性格の葵ちゃんなら、昨日のことなんて気にしないで普通に「おはよう」って声掛けそう。

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