宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと
 行く時は離れて歩いていたけれど、帰り道は宮野くんと並んで歩けてる。

 歩き始めて結構たったけれど、なかなか伝えたいことを言い出せない。遠回りしているけれど、このままじゃ伝える前に家に着いちゃう。

 さっき交換してもらったブレスレットに触れ、伝える勇気をもらう。

「宮野くん、お互いに好きって言ったら元の世界に帰れるって話、言えなかったの」

「……なんで言えなかった?」

「条件を聞いた時にね、絶対に無理って思ったから。宮野くんに『好き』って告白されることも、そして私の気持ちをきちんと伝えることも」

「……」

「宮野くんは私のこと好きじゃないのになって思って……」

「そんなの、直接俺に聞いたわけじゃないのに決めつけて。俺の心の中なんて、俺しか分からないじゃん……俺は小松のこと……」

 宮野くんの言葉を私はさえぎる。

「これ以上は言わないでも分かってるから言わないで? 私ね、戻れる方法、他に探してみようと思ってるから」

 私は早歩きして宮野くんを抜かし、彼の前に立ち、止まった。


 そしてもう一度ブレスレットに触れた。 
 彼に背を向けたまま――。

「宮野くん、これから言うこと聞き流していいから。あのね、私、もう何年も……何年も宮野くんのことが好きだったの」

 そして振り向いて目を合わせて、必死に笑顔を作って言う。

「もう暗くなってきたね! 早く帰ろ? 葵ちゃんたち、心配してそう」

 こんな形で気持ちを伝えるなんて思わなかったけれど、今まで積み重ねてきた『好き』を伝えたくなって。

 言えてすっきりした。

 それと同時に、なぜか宮野くんに振られた気持ちになって、涙が出そうになった。

 笑顔を作りながら泣きそうな私。
 きっと今、すごく変な顔だと思う。
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