宮野くんに伝えたい想い~夢の世界から戻る方法は『好き』を伝え合うこと

14*黒い影

 「結芽!」

 家の近くまで来た時、暗い中に葵ちゃんの姿がうっすら見えた。
 新井くんも葵ちゃんと一緒にいる。

「葵ちゃん!」

 私が葵ちゃんの名前を呼ぶのと同時に、黒い大きな何かが葵ちゃんと新井くんの前を横切った。

 それはそのままこっちに向かってきた。

 きつねの耳がついているけれど人の影のような雰囲気。

 もしかしてこれが?

「やばい、黒い影だ……前に戦った時に使ったやつ、出せるかな? 小松、卵持ってて?」

 わたしは卵のカゴを受け取ると、宮野くんはカバンから小さくて透明な玉を取り出した。

 そして彼がぎゅっとその玉を握ると、それは剣になった。

「えっ? 宮野くん、もしかして戦うの?」

「うん。前、勝てたし」

「前って、テントにいた日だよね? あの日、戦ったの?」

「うん。前に戦ったのはこんなに巨大じゃなかったんだけど……ハードモードだからかな、でかいな」

「危険だよ! 大きくて強そう。勝てないよ! 話し合いじゃ解決できない?」

「だって、俺はこの世界のやつらと会話できないし」

 そう言って宮野くんは戦い出した。

 思いきり剣を振りかざしても、剣の当たりそうな部分だけ黒い影の体がぐにゃりとして、一切剣は相手に当たらない。

 さらに黒い影は反撃しようとしてきた。

「嫌だ! 宮野くんいなくなったら嫌だよ! 私、話してみる!」

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