捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 話していて段々と恥ずかしくなり俯いたまま顔が上げられない。こんな相談は今まで誰にもしたことがなくて、ちゃんと伝わっているか不安になる。

「なるほど、そういう事だったのですね」
「どうしたら愛していると判断できるのでしょうか?」
「ううーん……そうですね、わたしの場合はですけど」

 ジュリア様はお茶を一口含んで優雅な仕草でカップを戻す。視線を感じて顔を上げれば、金色の光が浮かぶヘーゼルの瞳が私を優しく見つめていた。

「その人のためなら、代償を払ってもいいと思えるかどうかですね」
「代償を……」

 つまりその人のためなら、何かを失っても構わないかどうかだ。

「例えばですけど、家族のためにわたしは奴隷になってもそれでいいと思いました」
「それならわかります。私も家族の幸せを願ってここにやってきました」
「他にも友のために身を削って助けたり、親であれば子のために手間も時間もかけるでしょう。それから……」

 そこで一旦言葉を区切ると、ジュリア様は激情の炎を灯した瞳で艶やかに微笑んだ。

< 142 / 239 >

この作品をシェア

pagetop