捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「わたしはカイルの幸せのためなら、この命すら差し出します」

 カイル様に対する真摯で熱い想いを耳にして、番となった伴侶も竜人と同じように深く深く愛するのだと知る。

「難しく考える必要なんてないんです。ロザリア様はアレス様が幸せになるために何ができますか?」
「私ができることなら何でもするわ」

 そんなのは考えるまでもない。アレスは大切な人だから。

「それは他の人たちにも同じ様にできますか?」
「他の人には……全員に同じ様にはできないわね」

 頭に浮かんだのはウィルバート殿下だった。一応元夫だったけど、アレスと同じ様になんてとてもじゃないけど無理だ。

「例えばですけど、アレス様が他の女性と寄り添っているところを想像してみてください。どんな気分ですか?」
「…………それは、いい気分ではないわ」

 そんな事ないとはわかっているけれど、想像しただけで悲しみと虚無感と激しい独占欲があふれかえる。自分の心がこんなにも反応するなんて気がつかなかった。

「それってアレス様だけ特別ということではないですか?」
「————っ!!」


 特別。
 そうだ、特別なんだ。

 いつも側にいてくれて、一緒にいすぎて当たり前になっていたけどアレスは紛れもなく私の特別と言える。

< 143 / 239 >

この作品をシェア

pagetop