捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 案の定、俺をわざと突き放すような内容の手紙だった。
 文字がいつものような滑らかなペン運びじゃない。所々震えて滲んでいる。こんなのわざと冷たく突き放してますと言っているようなものだ。何年ロザリアの傍にいると思ってるんだ。それに——

「俺の愛の深さをまだわかってないようだな……」

 こんな手紙ひとつで俺が諦めると思っているのか? あれだけ愛情を示したのに伝わってないなら、もっと遠慮なくアピールしようか。

 それでも手書きの手紙は俺にとっては貴重な宝物なので、胸ポケットにしまい込みセシリオ様に視線を戻した。

「姉上からの伝言で、アレスは自由にしていいと言っていた」
「それはよかったです。では遠慮なく《《自由にさせていただきます》》」
「アレス、ロザリア様を頼んでいいか?」
「ブレス様、頼まれなくても私が取り戻します。お嬢様は私の番ですから」
「えっ? 姉上が番……って? ま、まさか……アレスは竜人だったのか!?」
「セシリオ様、私がご説明いたします」

 詳しい説明はブレス様に任せて執務室を後にした。
 屋敷の外が騒がしくなって、父上たちもこちらに着いたと確信する。さて、これから本格的に動くとしよう。もう今までのように黙って耐えたりしない。

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