捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「今まで大切な人たちのために耐えに耐えてきましたが、もう我慢するのはやめました。私の大切な人を奪うというなら、死ぬ覚悟はできているのでしょうね?」

 自分の欲望を通すために他人を踏み躙るのだ、表現は極端かもしれないがそれくらいの覚悟があるのかと問う。

 それともまだ私から奪うつもりなのだろうか。これ以上何を奪うというのか。あの十年間はすべてをあなたに捧げてきたではないの。
 それをもういらないと切り捨てたのは、ウィルバート殿下だわ。

「なんだその口の利き方はっ!」
「お黙りなさい! クズ野郎が!!」

 昂ぶった感情のまま言葉を吐き出せば、ラクテウスの街ですっかり聞き馴染んだ下町言葉がポロリと飛び出してしまった。淑女らしくないと普段は使っていなかったけど、これ以上しっくりくる言葉が他にない。

「あら、失礼。思わず本音が出てしまいましたわ」

 私の聞いたことのない暴言に目を丸くしたウィルバート殿下が、あまりの衝撃で口を利けなくなっている。ちょうどいいのでそのまま思っていたことを言い切ることにした。

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