捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「人の話もろくに聞かず、勉強は嫌だと逃げ回り、愛妾にうつつを抜かした挙句その愛妾と側近は失脚ですか。血統しか頼りになるものがないのですね、お可哀想に。ですが……ろくに勉強も鍛錬もせずに好き勝手やってきて、それでずっと努力し続けてきた私に勝てると思いますの? 片腹痛いですわ!」

 あら? 少し涙ぐんでいらっしゃるわね?
 少し言い過ぎてしまったかしら。でもこれだけお話ししても伝わっているか微妙なところだわ。

「そろそろお喋りはお終いにしましょうか。おやすみなさい、ウィルバート殿下」

 魔銃をそっと取り出して、最後の一撃になる眠りの魔弾を額に打ち込んだ。込める魔力は最低限だから痛みもなく安らかに眠りにつけるはずだ。

「ロザ……リ……」

 ほんの軽い衝撃だったにも関わらず、まるで力が入っていなかったウィルバート殿下はそのまま仰向けに倒れてしまう。最後まで眠気に抗っていたようだったが、やがて瞼はかたく閉じられた。

 終わった。私の中でウィルバート殿下とのことはすべて終わった。
 もうこれからこの男に振り回されることはない。
 心からの解放感を味わっていた。
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