捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました

32話 暴かれる策略


「アレス! やっとスッキリしたわ! もう、本当に気持ち悪くて仕方なかったの!」

 振り返るとすぐにアレスが抱き寄せてくれる。少し埃っぽいけど、きっと私のために色々と準備していたのだと簡単に想像できた。だからそんなところも愛しく感じてしまう。

「すぐに助けに来れなくてごめん。スレイド伯爵夫妻の救出もあったから無理できなかった」
「いいの、アレスが助けに来てくれて、本当に嬉しかった。ありがとう」

 自然と唇が重なり、角度を変えて何度もついばむようなキスをした。やがて頬にまぶたに首筋にと柔らかい温もりが移動していく。
 幸せすぎて頭がボーッとしそうになるけど、まだ仕事が残っているのだ。

「ア、アレスってば、もうダメッ! ウィルバート殿下に魔法誓約書のサインをもらわないと!」
「…………そうだな。明日じゃダメか?」
「ダメ」

 ここは心を鬼にして断固拒否しないと危険だ。私もうっかりしたらアレスに与えられる感覚に流されてしまう。そしてきっとそこから抜け出せない気がする。

「わかりました。ではここからは専属執事に戻りましょう」
「えっ! 戻ってしまうの!?」

 実はアレスに『ロザリア』と呼んでもらえて嬉しかったのだ。専属執事のお嬢様という呼び方もよかったけど残念に思ってしまう。

< 206 / 239 >

この作品をシェア

pagetop