捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「本当に? アレス様!? ついに戻ってきたのか!?」
「やっぱりアレス様だったのか! そうじゃないかと思ったんだ!」
「キャー! 成長期を迎えたのねっ!」
「何とめでたいことか! 今夜はお祝いだな!!」

 どんどん広がる熱狂的な歓迎に、私だけがついていけていない。

「……みんな大歓迎ね。アレスはやっぱり高貴な家のご子息ではないの?」
「親が要職についております」
「要職ね、納得だわ」
「それと番を探す旅に出ていたので、戻ってきたことにみんな喜んでくれています」
「番を探す旅……」

 明らかに敬うような視線を向けて集まってくる街の人たちに、初めて会ったころの見立て通りだったと納得する。そしてアレスが私に言った旅とは、番を探すことだったのだと理解した。

 それなら、番はまだ見つかっていないのかしら? そうだとしたら、また旅に出るのかしら?

「おお、こちらがアレス様の……!」
「まあ! なんて美しい方なのかしら!」
「それで、アレス様! この方のお名前は!?」

 集まってきた街人たちは、ターゲットをアレスから私に変えても歓迎の意を示してくれる。キラキラした瞳を向けられて逆に落ち着かない。
 街の人たちに囲まれてその勢いに一歩あとずさると、私の視界がぐるりと回転した。

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