幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「ちょ、ちょっと待って。クララ、まさかじゃないけどアランと同じ部屋に泊まったのか?」
どうか否定してくれと心の中で叫びながらギュンターは質問する。
「それは、そうです。一応私たちは夫婦の設定だったので。」

「あの男に何かされたんじゃないだろうな?」
突然大声で詰め寄ったギュンターに驚いて、クララは後ずさりをする。
(夫婦設定で何日も一緒に同じ部屋で過ごしただと!?冗談じゃねぇ。)
ギュンターの中で、何かの糸がプチンと切れた。

「ちょっと、団長!」
ギュンターはクララをベットの上に押し倒して、両腕を押さえつける。
「クララをアランになんて渡さない。」
クララに聞こえるか聞こえないかの声で呟くと、
ギュンターはクララの唇に顔を近づけた。

「アランさんとは、本当に何もないです。部屋は一緒だったけどベットは別だったし。お願い。信じてください。」
涙声で弁明するクララの声に、ギュンターはハッと我に返る。
(俺は今、クララに何をしようとした?)
今自分がしようとしたことへの正当性を見つけることができず、
どうしたらいいか分からなくて、ギュンターはクララを抱きしめた。

「団長・・・?」
「すまない。ついアランに嫉妬してしまった。」
「嫉妬・・・?」
「クララと夫婦役で、任務とはいえ同じ部屋で過ごしたなんて嫉妬せずにはいられないよ。自分の心が狭すぎて、自分が情けなくなる・・・クララが無事で良かった。おやすみ。」
< 42 / 97 >

この作品をシェア

pagetop