幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
(びっくりした・・・さっきの団長、どういうことなの?)
ギュンターが去ったテントで、クララは一人ドキドキしていた。
ギュンターに掴まれた手首はいまだに熱を持っている。
(さっき、絶対に「嫉妬した」って言った。あれは言葉通りに受け取っていいの?だとしたら団長は私に気があるってことでいいの?)

クララはギュンターのことが好きだ。
だけどそれはクララの完全な片思いで、成就することのないものだと諦めていた。
でも先ほどのギュンターの態度はクララに好意を抱いているにちがいないものだった。
(ということは、私と団長は両想いってことでいいのかしら。)
恋焦がれた相手が自分と同じ気持ちだったなんて信じられない。
ベッドに押し倒された恐怖よりも、両想いだったことへの嬉しさが勝ってしまった。

でもそれからというものの、
戦争が本格化してギュンターは多忙を極めたので、
クララがギュンターと過ごす時間は全くといってなかった。
心なしか、ギュンターが自分を避けているようにも感じる。
時間が経つにつれて、
テントで抱きしめられたのは夢で、
現実と思い込んでいるだけなのではという気もしてくる。
戦争という非常事態で色恋沙汰を持ち込むのも不謹慎だ。
ひと先ずクララは自分の気持ちにふたをすることにした。
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