夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
ゼロ章 深夜の不良学生。

第1話 幸せの向こうにある光。

母方のひいじいちゃんが亡くなった時。

ただ泣く俺に,夫に先立たれたばかりのひいばあちゃんは言った。



『おじちゃんは,お星さまになったの。人は皆,いつかお星さまになるの』

ーだから,泣かないで。



人は死んだら星になる。 

良くある慰めの言葉。

幼くて,そのひいじいちゃんがどんな人だったかは忘れてしまったのに。

─昨年とうとう亡くなった,親戚のどの兄弟の名前もシャッフルしてしまう認知症のひいばあちゃんの言葉だけは,ちゃんと覚えていた。

あの優しい笑みが,深い悲しみを含んでいたことも。

人が死んで星になるなんて,そんなことは決して無いのだと知っている今でも。

俺はずっと,あの言葉を信じてる。



─『夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。』─



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