夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。


深夜2時。

真っ暗で静かで,ふと指先を擦り合わせる。

そんな冷たい空気の流れる無人の公園に俺はいた。

遊具と俺の他,在るのはたった一本,薄明かるい電灯だけ。

揺れることもないブランコは,頼りなく俺を支えるただのイスと化している。

ふと向かいの道から足音がして,俺は唐突に恥ずかしい気持ちに襲われながら,星を見上げやり過ごした。

と,思ったのだけど。

足音は速度をあげて,俺に飛びかかるように向かってくる。

ーガッチャン……!!!

呆気にとられた俺は,声をあげる間も相手の姿を確認する余裕もなく,ブランコの鎖を強く握り目を瞑った。

キィキィとブランコの悲鳴に隣を見れば。

パーカーに大きく広がるスカートを穿いた女が,足から飛び乗ってブランコを漕いでいた。

いや,女と言うより……少女?

顔面一杯に笑顔を(たた)えて,イタズラな目を向けてくるその奇妙な人間は,俺と同い年かその下位の年齢に見えた。

未知との遭遇による緊張も,恐れるほどじゃない人間と分かると次第にほどけてくる。

ただ"変な人"とレッテルを貼り付けて,俺は公園を出るか迷った。

でも最初にいたのは俺の方だし。

そんな意地を張って深夜の公園に居座るのも,充分変な人なのだけれど。

俺は取り敢えずじろじろ見るのをやめようと,こちらを向く目に返すのをやめようと。

無視を決めて正面を向いた。



< 2 / 47 >

この作品をシェア

pagetop