夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
ヘッドホン,パソコン,キーボード。
それは,当時俺が友達とどちらが先に手にいれるかと競ってバイトしていた,理由そのもの。
欲しかったメーカーのものと,全く同じものだった。
その価値を,俺はよく知っていて。
だからこそ,お母さんが春陽の行かない理由を増やすだけの理由が分からなくて。
教材よりそんなものを与える意味が分からなくて。
春陽は
学校に行かないから怒られているのではなく,"怒られる代価として学校に通わない"のだと気付いてしまったから。
何もかも考え方の全てがひっくり返ったあの瞬間。
俺は,春陽を庇うのを,やめた。
お母さんは悩み,泣き,春陽の前ではただ赦し。
父さんは悩み,葛藤し,春陽の心を更に遠くへと距離を伸ばし。
俺は傍観し,顔を逸らし,春陽がどうしているかもよく知らない。
ただ春陽が風呂を忘れ,怒られる横で風呂を沸かし。
米を炊き忘れキレられる裏で米を炊き。
俺もまた,部屋に籠るだけ。