夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。

それでも俺は,弟が大事だった。

特別仲がいいわけでもなかったけれど,それでも無視するほどじゃなくて。

人間として,家族として。

状況を何とかしてやりたかった。

だから,何度も,父さんにもお母さんにも,何度も言葉を掛けた。

意見して,たまに怒られて,それでもって沢山相談や会話を試みた。

だけど



『春陽,これでいいんでしょう? でもね,ちゃんともっとせめて部屋から出てきたり,栄養のあるものを食べなさい』



たまに見える部屋の中,栄養価の少ない食べ物の痕跡が散らばる不衛生で散らかった部屋の中に。



『お父さんにももうあんまり強く言わないようにお母さんも話しておくから』

『うん』



春陽のたった1つの世界に,新品の機材が運ばれているのを見た時。

俺はプツリと,春陽の為に動くのを止めた。
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