夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
2章 君は昼駆けるトロイメライ。

第3話 俺にも,きっとこの世の誰にも出来ないこと。






彼女に家族の話を打ち明けて以降。

彼女はまた,数日ぱったりと姿を消した。

消したと言っても,俺達の関われるあの公園に現れなくなった程度の話だけど。

数日ごときではいつもと変わらない。

それでも,あの日は特にあの人の様子がおかしくて。

俺はまた,彼女の生存すら心配になってしまう。

やっぱり,余計な話をしたのがいけなかったんだろうか。

また,前みたいに話せたらもう他には望まないと思えるのに。

なんで,どうして。

あの人は何も語らないから,いつも謎ばかり置いていく。

と,目蓋に浮かべるあのいつもの暗闇に,邪魔な光が差し込んだ。

またいつもの,朝が来る。

無理やり目蓋を持ち上げると,容赦なく朝日がカーテン越しに射した。

東向きの,いつも俺が抜け出すのに使っている窓はベッドの右側にあって。

俺はいつも右手を下にして眠るから,向かいの南窓がついた春陽の部屋と違って,朝は眩しいのが常だった。

まだ起きたくない。

日曜の休日なのに,意味もなくこんな朝に起きたくない。

今週最後のお休みなんだ,文字通り休ませてくれ。

寝返りで,ほぼ無意味だけれど日を遮る。

2度寝に興じようとしたその時に,頭を突き抜けるインターホンが鳴った。

< 27 / 47 >

この作品をシェア

pagetop