夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
ーがちゃり。

いつの間にか日は落ちていて。

逃げ場の無いリビングに,玄関から大きく音が響いた。

春陽くんの手札へ手を伸ばしていた堤くんの手が,止まる。

賑やかだった空間は突如しんとなり。

春陽くんの困った顔が,私を捉えた。

私も予定外の事にどうしていいか分からない。

久々のトランプに夢中になって,忘れていた。

どうしよう。

どうしよも,ない。

すとんと座り直して,廊下を見つめる。



『ただいま。……? あれ? 文世~? この見慣れないスニーカー,どうしたの~?』



堤くんより小さいはずのスニーカーは,シンプルなデザインだったからか。

2人のお母さんである女性は,文世くんの物だと勘違いしたようだった。

頭じゃどうしようと繰り返しながら,ゆっくりと立ち上がる。

女性が帰宅し,リビングのドアを開けたのと同時に,私はその付近まで近づいていた。



「わっ……え?」

「あの……すみません。勝手にお邪魔しています」



明らかに困惑した様子を見せたお母さんは,私の奥で何故かトランプをしている息子二人を見てさらに困惑を深くする。

堤くんがずっとトランプを引く手前で固まっていたせいで,余計にヘンテコな状況を作り上げていた。



「2人とも……なに,してるの??」

「えっ……と。ババ抜き?」



何故か疑問系になりながらも,ババ抜きと言う子供っぽい遊びに堤くんが恥ずかしくなりながら答える。

机に広がった私の分を見て,お母さんはようやくもう一度私をみた。



「すみません。私,三好 好暖って言います。2人の友達で,午前中にたまたま堤くんと会って,その流れで……」



それで,家までついてきてトランプしてました。

と言うのは少し気が引けた。

だけど,押し掛けてきた事実は上手く隠せたからと,ここもにこりと笑顔で乗りきる。



「もう,帰ります。勝手に上がってしまってすみませんでした」
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