夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
ぺこりと頭を下げた私をみて,お母さんは少々戸惑いがちに私を引き留めた。



「お友達……? 春陽も???」

「……はい。3年生で学年は違うんですけど,同じ中学に通ってるんです」



そう発した途端,後ろで兄弟が揃って音をたてる。

自分の母親へさらさらと嘘を吐く私に感覚だけで気付きながら,2人とも横槍を入れる事はしなかった。

それを確認して,ふふっと間を取るためだけの笑い声が響く。



「だから,先に出会ったのは春陽くんの方で,堤くんとは卒業してからは会えてませんでした。今日も,最近はあまり会えない春陽くんに会わせてくれようと」



先輩なのに堤くんって,変だったかな。

そもそも全部が説明くさくて,大丈夫かな。

2人とも私の年齢を知らないとは言え,鯖読みすぎちゃったし……

2人の目にもちゃんと若見えする??

そんな心配をしながらも勝手に辻褄が合ってきて,自分でも怖くなった。

だけどもう,ついてしまった嘘に引き返せない。



「また,学校で待ってますね」



失礼します。

そう去ろうとしたけれど。

それもまた,お母さんが引き留めた。

意外と逃がしてくれない。

これ以上無理に帰ろうとすれば,疚しさがバレてしまう。

そんな心配に,私はとうとう両足を揃えた。



「……三好さん。今日,すき焼きにしようと思ってるの。いいお肉があるから,良かったら食べていかない?」



送ってあげるからとまで言われて,私はどうしていいか分からなくなる。

時計をみれば,まだ5時半で。

家に帰ってからでも充分夕飯に間に合う時刻。

なのにどうしてそこまでと思ったけど,答えは直ぐ後ろ,仲良く揃った兄弟にあって。

私は声を震わせながら,小さく答えた。



「父に,聞いてみます……」

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