夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
「ごめん,間に合わなかった」




ててと起き上がるのは堤くん。



「! 手,擦りむいてる…!」



どうりで痛みを感じなかった筈だ。

咄嗟に彼が私の頭を庇ってくれたんだろう。



「や,いいよ。それよりそれ,持ってきたなら羽織ってて」



はらりと肩を滑るラッシュガード。

私は思わずたくし上げるように肩を隠した。



「大丈夫ですかー?」



プールの監視員さんが声を掛ける。

私はすくっと立ち上がって,大丈夫だと身振りで伝えた。




「やだ。はずかし。ほら行こう堤くん。……ありがとね」

「もーー何やってんだよ……」



本当は心配したくせに,やけに大人びた呆れ方を見せる春陽くんが面白くて,私はついくすくすと笑った。



「何笑ってんの」

「なーんでも。楽しいね」

「まだなんもしてないでしょ。ほら,50m勝負。負けたらあっこのアイス自販機ね」



安請け合いすると,堤くんが待ったをかける。



「春陽お前,昔なんかで賞取ってなかったか?」

「ちっ。なんでいうんだよ」

「いいじゃんいいじゃん。堤くんもやろ」



いししと笑って,私は2人を引っ張った。

そういうの大好きだよ。
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