転生公爵令嬢のイチオシ!
控え室は舞台の左右で男女別になっていた。
立候補者達は気合いの入った服装だ。
私達は今着ている学園の制服姿。
名前が呼ばれるまで控え室で待機する。

「ではメリアーナ、またあとで。話をしたいことがあるから終わったら花の温室に一緒に行こう」

「はい。では後程」

話って何だろう。
でもまた温室で一緒にいられるのね。
フフフッと笑みが出る。

控え室に入って暫くするとコンテストのスタッフである生徒が来て、このあとの流れを出場者に説明してくれた。
そしてコンテストが始まった!
それぞれ名前が呼ばれて控え室から出ていく。
持ち時間は5~10分程度で、自分の魅力をアピールするようだ。
たくさんの人が見に来ているようで歓声もすごい。
お化粧もバッチリでお洒落をしている出場者達は次々と舞台に出て行く。

舞台袖からチラリと覗く。
あっ!マイクを使っているわ!
きっと学園祭が始まる前に学園と契約したのね。
イチオシ堂の店舗スタッフ時代の里英ちゃんは販売スキルが抜群だったものねと感心する。

私は急遽決まったから最後に名前が呼ばれるらしい。
もうすぐだわ!
控え室の椅子に座り、ポケットに入れておいたピンクのリボンつきのイッチくんマスコットを出して心を落ち着かせる。
大勢の前に出るって緊張するわ。
名前が呼ばれて舞台に上がったあとは、すぐうしろに下がろうと決める。

ここは講堂Aだから昨日レイ様が演奏をした場所だ。
私も客席で見ていた。

それに、あとで一緒に行く花の温室も昨日レイ様から…。

思い出すと緊張とは別のドキドキがまた…。
イッチくんをギュッと両手で包み込む。

控え室には私だけになった。
次はいよいよ私ね。

バンッ!!

バタバタッ!!

「え!?」

急に裏口の扉が開き複数の足音がした。
うしろから口元に布をきつく当てられて頭のうしろで結ばれた!

「んん!!」

痛い!強い力だわ!

「静かにしろよ。騒ぐとロクなことがないぞ」

え!?男の人の声!?

「早くしろ!」

小声で指示を出している人がいる。
そして、大きな男の人が私の両手を背中のうしろで、両足も動けないように縛る。
黒い布を頭からバサリと掛けられ体全体に巻きつけられた!

「よし!運び出すぞ!」

「おう!」

「ッ!!?」

私は簡単に持ち上げられ、何か箱のような四角いものに押し入れられて座らされてしまった!

ガタン!!

「ッ!!」

急に動いたせいで、箱に肩や腕を思い切りぶつけた!

「おい!気をつけろ。傷つけないように言われただろ!」

え!?どういうこと!?

箱ごと持ち上げられたようで体も浮く。
運び出すってどこに行くつもり?

「!!」

動いているけど、どこに向かってるの?
何かの演出!?
でもこんなの聞いていないし、これってもしかして誘拐?
貴族の子供達が通う学園だし、あり得なくもない。
学園祭に紛れて荷物として運び出すつもり!?

どうしよう!!
どこまで行くの?
声も出せず、恐怖で震えて固まる。

バタバタと複数の足音が聞こえる。
何かの扉が開く音がしてまたバタンと閉まる。

「ここに固定しろ!」

私が入っている箱を何かに置いたようだ。

「急げ!!」

蹄の音!!馬車に乗せられたの!?
急にガクンと馬車が動き出した!
嘘!?学園から離れてしまう!
レイ様!どうしよう!!

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