婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「フィル様、家族なら当然の反応ですから落ち着いてください。アルテミオ様はフィル様の婚約者がどんな人間か気になっただけなのです」

 大切な家族の婚約者ともなる相手なら、きっとどんな人間なのか、家族が幸せになれるのか気になっていたに違いない。だからこそアルテミオ様は私をすぐに認められなかったのだと思った。

「義姉上のおっしゃる通りです。その節は本当に申し訳ありませんでした」
「いいえ、お気持ちはわかります。でもきっかけがなんだったのか気になってはいます」
「アルテミオ、正直に話せ。それならラティに働いた無礼は目をつぶろう」

 苦笑いを浮かべたアルテミオ様は、私に優しげな視線を向けて話しはじめる。

「それは義姉上が母上の暴言を止めてくれたからです。あの時、私は身動きひとつできなかった。兄上が傷つくとわかっていながら、自分の過去が蘇ってなにもできませんでした」
「アルテミオ様もおつらい経験をされてきたのですね……」
「あの頃は兄上が戻られて、周囲は手のひらを返したように無関心になったのです。最初は兄上を恨みましたが、私の努力を認めてくれたのも兄上だけでした。あんな両親でしたが、おかげで兄弟仲はよかったですよ」

< 124 / 237 >

この作品をシェア

pagetop