婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「ふふっ、さすがフィル様です。でもそういう理由でよかったです。もしかしたら、私の腕が落ちて重大な見落としをしていたのかもしれないと、自信をなくかけていました」
「……もっと厳罰に処すか」

 なんだか物騒な台詞が聞こえてきたので、慌てて言葉をつけ足した。

「でも、フィル様のおかげで自信を取り戻せました! フィル様は私にとってなににも代え難い存在です!」
「うわ、そんな愛情表現されたらヤバいな。いっそ衝立は撤去しちゃう?」
「それはダメです。け、結婚するまでは……このままでお願いします」

 結婚宣誓書にサインして夫婦になるまで、寝顔を晒すなんて恥ずかしいことはできない。

「倒れたラティと三日も同衾したから、もういいと思うけど」
「寝込んでいた時のアレは、ノーカウントです!」
「ふふっ、わかったよ。ラティは本当にかわいいね」
「おやすみなさい!」

 これ以上フィル様に翻弄されたくなくて、強引に話を切り上げた。でも恥ずかしさで火照った身体はなかなか冷めず、しばらく寝付くことができなかった。


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