婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「しかし……簡単には信じられません。ラティシア様は本当に月の女神の末裔なのでしょうか?」
「月の女神と同じ白金色の髪に夜空を思わせる神秘的なアメジストの瞳。それに常人では成し得ない治癒魔法。これだけ条件が揃っていて信じられないというのか?」
「……月の女神の末裔については文献が少なすぎて、判断できるほどではございません」

 それでもオズバーン侯爵は食い下がる。なんとしてもブリジットを僕の婚約者にしたいのだ。

「そう、わかったよ。ならば月の女神の末裔だと証明できたら問題ないね」
「はい、確たる証拠を出していただければ信じましょう」

 言質は取った。
 ラティをここまで疑ったことを心の底から後悔させてやろう。
 それからラティを引きずり落とそうとする奴らは——僕の敵として全部排除する。


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