婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 昨日の毒物のことが頭をよぎり、同時にフィル様から解毒薬を飲まされたことも思い出して慌てて思考を中断する。

 会議室は入り口から見て正面奥に国王陛下の席があり、国王陛下から見て左手にフィル様と私の席が、右手にアルテミオ様と聖女であるブリジット様の席が配置されていた。

 貴族たちの席は国王陛下の前にある証言台を囲むように半円状に配置され、国王陛下に近い席から高位貴族が順に並んでいる。後方の席へ行くほど座席が高くなり、どの席からも証言台が確認できるようになっていた。

 私はフィル様の隣の席へ座り、しばらくすると国王陛下も入室し開始の言葉を告げた。

「それではこれより国議を始める! 本日は王太子フィルレスの婚約者、ラティシア・カールセンが不適格ではないかと意見書が届いた。これについて審議する」

 いよいよ始まった。フィル様をチラリと見るけれど、前を見据えて沈黙を守っている。私も静かに会議の進行を見守った。

「まずはラティシア・カールセンについての意見書を読み上げよ」

 国王陛下の言葉で証言台の後ろに座っていた事務官が立ち上がり、手元の書類を読み上げていく。

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