婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 ここで会議室がざわりとどよめいた。映像の中のフィル様は、マクシス様とビオレッタを排除した時のように冷たく非情で、それが私のためだと思うと嬉しさが込み上げる。

『この場ですべて白状するなら、処罰については考慮する』

 映像に映し出されている貴族たちは真っ青な顔で俯き震えている。その先の貴族たちの言葉を、首謀以外の全員が固唾を飲んで待った。

『……聖女ブリジット様の父であるヘルメルト・オズバーン侯爵から命令されました』
『それだけ?』
『——国王陛下もその場にいらっしゃいました。成功した暁には我々を陞爵してくださると、お約束いただきました』
『では次の国議には全員参加するように。それまではいつも通りに過ごせ』

 ここで映像が途切れる。

 首謀者はオズバーン侯爵と国王陛下。それが明らかになり、会議室はため息すら聞こえなそうなほどの静寂が流れた。

「さて、これはどういうことでしょうか。オズバーン侯爵、国王陛下。僕が納得できるだけの説明を求めます」

 フィル様の言葉は鋭利な刃物のようで、この静けさを切り裂いた。


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